中国では、日本に比べ、本物によく似たいわゆるコピー商品というものを目にする機会も多く、一部の中国人には「これはむしろニセモノ文化という立派な独自の文化である」とまで考えている人もいるそうですが、実は日本でもその昔は欧米から「メイドインジャパンは猿真似しかできない」と言われ続けた時期がありました。いずれも問題になるのは知的財産権ということなのでしょうが、難しい法律を持ち出すまでもなく、コロンブスの卵と同じで「真似するのは簡単だがそれを最初に考えつくことが難しいのだ」ということから言えば、苦労したアイデアを簡単に真似されれば、まあ、怒る
のは当然といえば当然でしょう。
しかし、この猿真似商品も今風に言い換えてみると、そうですね、「オリジナルをリスペクトし、インスパイアされた商品」とでも言うのでしょうか、なるほど、これなら何となく悪いこととは思えなくなってくるから不思議です。でも本当に「リスペクト」して作られたものとは思えないうわべだけの商品にはやはり消費者の一人として腹が立ちます。例えば細かいものから挙げると、ペットボトルの炭酸飲料を買って、さあ飲もうとキャップを開けようとするけれどもなかなか開かない。力任せにねじると、キャップの土台の輪っかごと取れたり、よしんば土台が取れなくても、今度はミシン目のようになっているところがなかなか切れず、ねじる度に次第に糸のように伸びてきて(イメージがわかない方もいらっしゃるでしょうが、きっとそのうち体験する日が来て、「あ、これか!」とわかっていただけるでしょう。)飲む時に唇にチクチクすることがあります。逆にあまりにすんなり開いて、「プシュ!」とも言わず、あまりシュワシュワしないもの(こんな時は皆さんは飲むのをよした方が良いかもしれません。私は一気に飲んでしまいましたが。)もありました。あと、日本のものと箱の見た目はそっくりなのに、なかなか切れなくてイライラするラップや、ヨーグルトや豆腐のパックも日本のものと似て非なるもの、簡単には開いてくれません。いつぞやは加湿器の水を補給しようとタンクのキャップをひねったところ、プラスティック部品の作りが丁寧でないため、キャップの一部が尖っていて指を切ってしまったり、台所にあるシンクのステンレスの端っこも、やはり処理が丁寧でないため、ちょっと当たっただけで手が切れたりしたこともありました。
余談になりますが、特に外科医や料理人などは手のケガには非常に臆病なものです。これは、傷口というものはどんなに消毒してもすぐ多くの細菌が繁殖してしまうことから、たとえほんの小さな切り傷でも手術中の患者さんへの感染や食中毒の原因になることがあるため、手をケガすることはタブーで、ケガをすることはすなわち仕事ができなくなってしまうことを意味し、私も手をケガしたせいで何度か手術メンバーからはずされた経験があります。ですから職業柄つい手のケガにはより神経質になってしまいます。
しかし、医薬品や食品については直接口に入るものですから、皆さんも特に神経質にならざるを得ないでしょう。日本でも食品偽装は社会問題にまでなっていますし、新たに消費者庁という官庁まで新設されたようですが、ここ中国では、まるでオリンピックさながら、筋肉増強剤を与えて(ドーピングですよね)肉の量を増やした豚や、添加物を使用して肉の色を鮮やかに見せかけるなんてことが日常的に行われているという報道もありました。さらに驚いたのは、鳥インフルエンザを恐れるあまり、原料に鶏を一切使っていないチキンスープの素を新発売!という広告・・・???。ここまでくるともう本末転倒を通り越して、落語のような話です。
北京でも最近は、ペットとして連れて歩いている犬が雑種ではなく、一見して純血種と思われる(高そうな)犬を見かけることが多くなった気がしますが、そういえば少し前にペット用の犬を即席整形して高値で売るという記事が出ていたことを思い出しました。中国原産の愛玩犬としては、チンやシーズー、シャーペイなどが浮かびます(間違ってたらスミマセン)が、チャウチャウという犬もいます。以前飼っていたこともあるのですが、この犬は茶色のふさふさの毛に見事に垂れ下がった唇、医者が見ると即刻入院を勧めたくなるくらいの紫色の舌を持つのが印象的な犬で、この唇の垂れ下がり具合が悪いと高く売れないらしく、売り手は唇に生理食塩水の注射をすることによって大きく腫れさせてから売っていたそうです。また、茶色の犬が高値と聞けば、白髪染めよろしく白犬を染色して売ることもあったそうです。数日でばれることは業者も承知なのでしょうから、当然リピーターの客は期待できませんよね。
ファッションの世界(私はこの方面には全く無頓着、無知なのですが)でも今年は世界的不況の影響もあってか、ファストファッション(ファストフードになぞらえ、流行を押さえつつも大量に生産することで安価に提供できるファッションだそうです)や、プチプラ(プチ・プライスの略で、つまり「安い」ということでしょうが、「チープ」ではないところが重要なんだそうです。よくはわかりませんが・・・)などという言葉があるようで、中国では日本の雑誌に載ったばかりの流行りそうな服をあっという間にコピーしてさらに安く、かつ本物より早く市場に投入することができるそうです。個人的希望を言えば、ハンバーガーなどのファストフードもいっそのこともっと安い店が出てきて欲しいのですが。(日本とほぼ同じ価格のようですが、こちらでは相対的に「ごちそう」になってしまってなかなか気軽に食べられませんよね。そう思っているのは私だけでしょうか)
いずれの商品も、品質が良ければ早くて安くてどっかの牛丼屋のような素晴らしい人気商品になるのでしょうが、どうも品質は二の次にされていることが多いようで、どうしてもこれら中国製品に日本人があまりよい印象を持てない共通した原因とは、「見かけだけ」「その場限り」だからではないかと思えてきます。
オリンピックの時、日本語通訳が不足し、ついには通訳の日給の希望額が1日8000元(日本円で12万円くらいですよね)まで値上がりしたという話を聞いた覚えがありますが、千載一遇のチャンスとばかりに一生分をまとめて稼ぐつもりだったんでしょうか。いろいろ考えると、どうも中国の人は「明日の銭より今日の銭」というか、一攫千金狙いというか、はたまた初めから一発屋でよしとする欲のない性格なのか、「今日の損より明日の得を取る」意地汚い(?)日本人的考えとは所詮相容れることはないような少し残念な気もします。あくまで個人的な意見ですが、「猿真似」と言われた日本は、その都度オリジナルに少し手を加え、オリジナルより半歩便利な、あるいは少しだけ性能がよいものを作ってきたように思います。もしかするとそれがまたオリジナルのさらなる怒りを買うことになったのかも知れませんが、あえて日本の肩を持つと、これがまさに「お手本」にしたということであり、つまりはそこにオリジナルへのリスペクト(尊敬)の念も感じとることができるように思うのです。
オリジナルの品質を落とすことなく、さらにそこにプラスアルファの付加価値が付いた中国製品が出てきた時、多くの人が持つ「お金持ちになりたい」という夢もきっと本当の意味で実現するのではないかと考えるのです。
なお、このコラムでは、なかなか個別に応じて差し上げることができない在留邦人の方の健康相談の窓口としても、皆様からの御意見、御質問を受け付けたいと思っております。残念ながら全てにはお応えできませんが、できるだけこの紙面をお借りしてお応えしたいと思いますので、下記アドレスまで御遠慮なくメールをお送り下さい。
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また、このコラムは、医務官が北京で暮らす中で、あくまで一人の日本人医師の目線で日々感じたことを書き綴ったものであり、大使館としての公的見解や方針とは何ら関係ありません。