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医者の不養生 vol.20 中国博覧会

出所:在中国日本国大使館 作者:医務官 稲富雄人 日期:2010-08-11 クリック数:

 日本も猛暑に苦しんでいるようですが、ここ北京も、少なくとも私が経験した4回の夏の中でもとりわけ今年の夏は暑いというか、“蒸し暑い”ですね。確かに今年は雨も多いせいなのか、まるで日本の夏のような蒸し暑さです。

 そんな中、わざわざというか、さらに蒸し暑そうな上海に行ってきました。万博見物です。日本人も多く外国人向けサービスが進んでいると言われる上海の医療機関を視察に行きたいと、以前から北京の医療機関の人たちと一緒に上海ツアーでも企画しようかと思っていたのですが、なかなか予定が立たなかったことに加え、どうせ自腹で行くのなら遊びの方がマシという程度の低めのモチベーションも手伝って、今回の万博見物とあいなりました。

 今回は実質1日半の日程で、おまけに連休中でしたので、それほど多くのパビリオンを回れるとは思っていませんでしたが、当日の入場者数が50万人を超えたと聞いた割にはいろいろと見ることができました。特に夜は人もかなり少なくなるだけでなく、各館のライトアップがきれいで、おまけに昼間よりかなり涼しくなるので並んでもさほど苦にならず、ねらい目でした。さすがに中国館や日本館、サウジ館など超人気パビリオンはあきらめましたが、夜の時間帯には日本産業館にも入ることができました。残念ながらウリの「世界一のトイレ」を見ることはできませんでしたが、日本の景気が低迷し、飛ぶ鳥を落とす中国の勢いにややもすると飲み込まれそうな心境の一日本人としては、日本の「ものづくり」の精神、日本人の誇りを改めて見た気がし、「日本はきっと大丈夫!」と自信を取り戻す気がしました。その後パビリオンを出て場内のトイレに入り、ふと便器を見るとそこには「FOFO」というロゴが・・・え?「TOTO」じゃなくて?・・・

 中国に3年もいるとだんだんニセモノ文化に慣らされ、ニセモノがあって当たり前に思えてくるので、もしまったく無実だったら本当にすみません。でも私は少なくとも「万博会場ですらそうなのか」という落胆と、いくら近未来的な建物が並んでいても「やっぱりここは中国だな」という妙な納得で複雑な心境でした。昼間の暑さにパビリオンをあきらめた入場者は、ベンチを占領して半裸で寝そべり、時折体を起こしては懐から取り出したきゅうりを丸かじりする。うん、これぞ中国!

 また、各パビリオンには来館記念スタンプがあり、別売りの中国パスポート型のスタンプ帳に押して回るという、よくあるスタンプラリーのような楽しみ方もできるようですが、これが商魂たくましい中国人のアンテナに反応したようで、報道によると、たくさんのスタンプが押されたこのノートが高く売れるらしく、中には一人で500冊も抱えて各館を回る“仕事”をする人も出る始末。ついにはスタンプサービスを中止したパビリオンまで出たそうです。一方で旅行前は、行列が苦手な中国人が果たして数時間も順番を守って並んでいられるのか、半信半疑(というか絶対無理だと思い込んでました)でしたが、実際には意外とお行儀よく並んでいて、その姿はちょっと中国人を見直しました。しかし、各パビリオンに設けられた障害者やベビーカーの乳幼児のための専用列を見逃す手はないと、すでに大きく成長してしまったわが子を無理やりベビーカーに乗せて専用ゲートを通過する家族を私も何度か見ましたし、あるいは多くの付添人を伴った車いすの入場者が、優先ゲートから入館するやすっくと立ち上がってみんなで元気に歩き出すという、クララも真っ青という状況も後を絶たないそうです。もちろん割り込みも健在でしたが、割り込まれてもあまり文句を聞かない北京と違い、かなりの勢いで周囲に文句を言われることが多く、しぶしぶ列の後ろに戻るという光景をよく目にしました。しかし、割り込みは防げても並んでいる間も気は抜けません。列の折り返しなどカーブの部分では、後ろの人が少しでも前に出ようと、虎視眈々と私たちの隙を狙います。一人が順番を抜かすのに成功すると、その家族や知り合い?が次々と当然のように私たちをかき分けて前に出ます。(^^;)まだこの国では、良心があることを前提に話をするには早すぎるのでしょうか。 これら“中国人的振る舞い”は確かに外国人運営には「まさか・・」と思われる意表を突いた行動だったのでしょうが、同じ中国人の運営陣であればさすがにある程度予想できたのではないのでしょうか。事前の対策が十分だったとは言えない状況に、それとも中国側運営はもっと人民の民度は上がっていると信頼していたのだろうか?と考えさせられました。

 私が初めて行った万博は大阪万博です。まだ内容を十分理解するには幼すぎましたが、それでも子供心に世界の最先端文明の展示に心躍らせたものでした。そしてあらゆる外国人を間近に見たのもあれが最初だったかもしれません。それ以来行きたいと思いつつなかなか行くことができない“万国博覧会”ですが、今回、今まで経験した万博と何か雰囲気が違うのがずっと気になっていました。なぜか“万博”という雰囲気が薄いのです。なぜだろう?しばらくしてその違和感の原因に気がつきました。会場には当然上海以外からも多数の人が訪れているのでしょうが、いずれにしても来場者はほとんど中国人(台湾人、香港人などを含め)で、時折韓国語らしき言葉を耳にする以外日本語すらほとんど聞かれることがなく、まして一見して外国人とわかる人種の人は各パビリオン関係者以外あまり見かけることがありませんでした。つまり、何となく国際色が薄いと感たのでしょう。なんだか、中国の大きな遊園地に来た感じとでも言うのか、少なくとも“万国”感より“中国”感が強かった気がします。それは、もしかすると単に外国人の数だけではなく、行列の後に累々と残るポイ捨てゴミパビリオン前の美しい噴水に浮かぶ多数のペットボトル、分別マークを全く意に介さず捨てられたゴミ箱・・・夢と魔法の国、ディズニーランドの雰囲気すら変えてしまうという中国人のパワーによるところが大きいのかもしれません。確か今回の万博のテーマは「よりよい都市、よりよい生活」だったような気がするのですが・・・?

 最後に、これから万博見物に行こうという方のために、私が個人的に気に入った会場内の食べ物についてお話ししましょう。 そもそも催し物会場内の食べ物なんて“高い”“まずい”“並ぶ”と相場が決まっているものですが、さすが世界に冠たる食都での万博、値段はさておきその沽券に関わるのか、そうそう“まずい”ものは出していないようです。 その中でも特に日本人の方のために穴場を・・・

 入場の長い列ですでに疲れ、お昼を兼ねて一休みしたくなったらドーナツとアイスコーヒーはいかがでしょう。私はポンデリング(わかりますよね?)が好きで、残念ながら一番好きなプレーン味はありませんでしたが、北京にはまだお店がない(上海にはあるそうです)日本のドーナツとおいしいアイスコーヒーが楽しめる店が中国館脇のメインストリートの中程にあります。隣にはやはり日本で有名なカフェがありますので、そちらでちょっとおしゃれなランチもいいかもしれません。

 炎天下のパビリオン行列で冷たいものが欲しくなったら、コカコーラパビリオン前のブースでフローズンコーラが買えます。他にも売ってるところがあるのかもしれませんが、ここはやはり直営感があるパビリオン前で買うのが気分です。日本では時々見かけますが、中国で見たのは初めてでした。あのシャーベット状に凍ったコーラの味は、夏ならではの醍醐味だと私は勝手に思っていてお気に入りの一品です。

 やはり暑い日の食事は、日本人なら冷たい麺など食べたくなります。比較的人が少ない浦西側、石油館の近くに日本からうどん店が出店しています。日本の店と違い、セットメニューが主体になりますが、私のイチオシは「温玉冷やしぶっかけうどん」と「納豆とろろ丼」のセットです。納豆も山芋も北京で手に入るので、とろろ丼は自分で作ることもできますが、中国では「とろろ」にして、ましてそれをご飯にかけて食べることなどまずないという、逆境の中でのお店の勇気あるメニュー選択に敬意を表したいところです。温泉卵がのった冷たいうどんは、おそらく言わずもがなで賛成多数だと思いますが、日本と違い生で安心して食べられる卵が少なく、そもそも卵を生で食べる習慣がないこの土地で、まして自分で作るのが難しい温玉を冷えたうどんにのせられたら・・・食べずにはいられません!

 あれ?また行きたいかも・・万博。

 なお、このコラムでは、なかなか個別に応じて差し上げることができない在留邦人の方の健康相談の窓口としても、皆様からの御意見、御質問を受け付けたいと思っております。残念ながら全てにはお応えできませんが、できるだけこの紙面をお借りしてお応えしたいと思いますので、下記アドレスまで御遠慮なくメールをお送り下さい。

 medical@mofa.go.jp ※アドレスが変わりました。

 また、このコラムは、医務官が北京で暮らす中で、あくまで一人の日本人医師の目線で日々感じたことを書き綴ったものであり、大使館としての公的見解や方針とは何ら関係ありません。


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